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韓国ドラマ「イ・サン」41話で見る朝鮮の政治

 韓国ドラマも、見ていると面白いものがあるのですが、あくまでもフィクションとして見る必要があります。日本の歴史ドラマでも同じですが、実際の内容とは違う場合があるという認識が必要です。ただ、大きな流れまでは変更することはないので、政治の大きな流れを知るための勉強にはなります。

 41話の話の前に、ここに至る経緯を書いておきます。その時代の朝鮮の王「英祖」には、実子で世継ぎである世子がいたのですが、朝廷内で権力を掌握していた老論派によって、貶められ、謀反を疑われ王から米櫃に入れられて餓死させられるという事件がありました。その世子の子であるイ・サンが世孫として、王位継承権を得るのです。

 しかし、朝廷を牛耳っている老論派としては、世孫から見て親である世子を陰謀によって殺しているので、なんとしても世孫を王にさせたくないのです。そんな状況で、世孫も成長して、王も老いて認知症を発症してしまい、王座を譲る決意をします。

 ところが、そんなタイミングで王が脳梗塞になってしまうのです。脳梗塞の前に、認知症が出ている時に、王が世孫に対して地位のはく奪をすることを命令してしまっていたので、老論派と王妃は、その命令書を口実に世孫に地位のはく奪を迫るのです。

 41話は、そんな状況から始まります。老論派は、長い間、朝廷を牛耳っているので、軍のほとんどを掌握していて、世孫の護衛隊くらいしか世孫側の兵はいない状況。さらに、老論派は老論派でもある親衛隊の隊長にも連絡をして、王のいる王宮殿と世孫のいる東宮殿を包囲するように命令します。

 世孫は、親衛隊の隊長に対して王の真意を問いただし、親衛隊としての職務を果たして欲しいと説得します。

 ここが、朝鮮らしいと思いました。というのも、軍のほとんどを朝廷内の派閥がほとんど掌握していること、これは、日本では考えられない状況です。英祖の時代は、1724年から1776年なので、日本では江戸時代中期になります。日本では、藩ごとに地域を治めていたので、軍隊もそれぞれの藩が管轄します。徳川幕府としては、直参の旗本と徳川家に関係する家の持っている兵がいるだけで、全国の軍隊を徳川幕府が掌握しているわけではありません。

 それまでの日本の歴史を見ても、地域ごとに管理する人を置き、警察権、軍事権、裁判権などを行使させていたので、どこかの派閥が集中して力を持つというのは、かなり難しい状況です。朝鮮半島の歴史を見ると、面積が狭いからなのか、中央に権力が集中しています。それは、今でもソウルとその近郊の首都圏だけに人口の半分ちかくが集中しているのを見てもわかるように、なぜか、中央に極端に集中する傾向があるようです。

 親衛隊の隊長の話も、ひっかかります。親衛隊というのは、当然のように王と王の一族に仕えるのが仕事です。一番信頼されていなければいけません。その親衛隊が、どこかの派閥に属するというのも、変な話です。王妃も王の一族とも言えるのですが、王とその王位継承権を持つ世孫が、本来は親衛隊が守護し、命令を聞く立場になるわけです。

 このエピソードが出て、本来の親衛隊としての職務を全うしたというのが、重要視されるということは、これは普通ではないということです。いかに、本来の職務を全うしない人が多いという裏付けにもなります。

 その後には、親衛隊に属している部隊長クラスの人間が、人数が少ないほうに加勢して負け戦に巻き込むような隊長には従えないとして、王宮殿を出て老論派に合流します。これが、朝鮮らしい。軍隊として、人数がいくら多くても負け戦とみたら、逃亡したり、相手側に寝返るのが多いと、軍隊としては全く機能しません。

 親衛隊の一部が寝返って、兵が増えた老論派は、兵を引き連れて、世孫の廃位を迫るために、王宮殿に乗り込むのですが、なんと脳梗塞であった王が出てきて、老論派を叱責するのです。

 ここまでが41話の内容でしたが、李氏朝鮮時代のゴタゴタがよくわかります。それにしても、韓国ドラマで李氏朝鮮時代の話は、よく題材にされるのですが、どの話でも、朝廷内の権力争いだけで、全くと言っていいほど地方の話や、政治、外交の話は出てきません。

 あと気になったのは、やはり兵士の装備。一般の兵士は、身に防具もなく先の形状が変わった槍を持っているだけ、隊長クラスは刀を持っていますが、刀身がまっすぐの直刀のものと日本刀のような反りがある刀のパターンがあります。これは、韓国が日本刀の起源は韓国だー!って言い始めてから、ドラマでも日本刀のような反りのある刀が増えたのです。ただ、その反りのある兵士が来ている鎧は、思いっきり中国風の装備です。

 これは、単純に中国からの影響が強い朝鮮半島は、武器や防具も中国式の物しかなかった証拠でもあります。ところが、突然、日本刀を韓国起源だと言い出したので、刀だけ、日本刀のような反りのあるものに変更した。というのが見てとれます。

 しかし、日本刀というのは、実は使いにくい武器です。直刀の場合は、両刃です。日本刀の場合は、片刃です。これだけでも直刀のほうが使いやすいです。まっすぐで先が尖っている直刀のほうが、刺すにも向いています。日本刀は、片刃で反っているので、ちゃんと刃筋を立てないと斬れません。刀の重さで、斬ることもできて、叩くこともできる直刀のほうが使うのは簡単です。

 日本刀は、両手で保持するのが基本です。しかし、両刃の直刀は、片手でも使えます。韓国ドラマでも、刀を抜いて片手で持っています。この場面を見ても、自然な体の動きとして、直刀が向いている証拠でもあります。日本刀では、両手で持ちます。これは、意味があります。

 道具として、形だけ見て起源とか主張しても、製造方法、原材料、使い方、修理方法まで伝わっていないと、ウソはすぐにばれます。

 韓国ドラマを見て、日本刀のような反りのある刀を見て、日本刀は韓国が起源という話を信じてはいけません。